高砂の古い町並みを歩いていると、白い漆喰と木の格子が美しい一軒の屋敷に出会います。
工楽松右衛門旧宅。

戸口をくぐった先には、土間の静けさ、長い年月を重ねた柱や梁、格子越しに差し込むやわらかな光。
主屋は江戸時代後期に建てられた木造二階建て。白い漆喰の軒裏や越屋根、古い建具など、この町で人が暮らしていた頃の面影が、あちらこちらに残されています。

部屋から部屋へと歩いていると、戸を開ける音や、土間を行き来する足音まで聞こえてきそうです。

この家のすぐそばには、かつて船が行き交った南堀川があります。
江戸時代の高砂は、瀬戸内海と加古川の舟運を結ぶ港町。船から荷を揚げ、人や物が行き交い、町には今よりずっと海の気配が近かったのでしょう。

この家に暮らした工楽松右衛門もまた、そんな海とともに生きた一人でした。
丈夫な帆「松右衛門帆」を考案し、各地の港づくりにも携わった人物として知られています。
格子窓。 風の抜ける土間。 立派な梁。
二百年近い時間を経た今も、家の中には、港町だった高砂の気配が静かに残っています。

海は以前より遠くなりました。
それでもこの家に入ると、ほんの少しだけ、船の行き交っていた頃の高砂へ戻れるような気がします。
工楽松右衛門旧宅

