公園の木々の向こうに、静かに佇む古い洋館があります。
大きなアーチ窓と、そこにはめ込まれたステンドグラス。
少し色褪せた外壁には、長い年月がそのまま刻まれています。
ここは、旧加古川市立図書館。

建てられたのは昭和10年。設計を手がけたのは、宮崎県庁舎など数々の公共建築を残した建築家・置塩章。
もともとは「加古川町公会堂」として、人々が集うためにつくられた建物でした。

二階には大きなホールがあり、講演会や美術展など、さまざまな催しが開かれていたといいます。
正面のアーチ窓、幾何学模様のステンドグラス、玄関まわりのスクラッチタイル。
重厚でありながら、どこかやわらかい。


昭和初期の建築らしい美しさが、今もあちこちに残っています。
そして1974年。
人々の声が響いていた公会堂は、本が並ぶ「加古川図書館」へと姿を変えました。
学校帰りに立ち寄った人。
子どもと本を選んだ人。
静かな机でページをめくった人。
47年のあいだ、この場所には、そんな小さな記憶がいくつも積み重なっていったのでしょう。

2021年、図書館は加古川駅前へ移転。建物は再び静かな時間を迎えました。
現在は使われていませんが、2009年には兵庫県の「景観形成重要建造物等」に指定され、その価値を残しながら次の活用へつなげる道が探されています。
公会堂から、図書館へ。
役目を変えながら、人々の時間を見守ってきた建物。
今の静けさもまた、長い物語の途中にある、ほんのひと休みなのかもしれません。
旧加古川図書館
:兵庫県加古川市加古川町木村226-1

