古い家には、ときどき、誰かの新しい人生が始まります。
いつか独立するなら、地域の人たちに親しまれる整骨院をつくりたい。
思い描いていたのは、どこか昔の町の風景のような場所。
そんな思いをずっと描いていた彼が選んだのは、縁側のある一軒の古民家でした。
古い家には、そこに暮らしてきた人たちの時間が、どこかに残っているように感じることがあります。
縁側があり、畳の部屋があり、長い年月を過ごしてきた柱や梁がある。
この場所をつくった彼が思い描いていたのは、ただ施術をするためだけの場所ではありませんでした。
江戸や明治のころ、鍼灸や整骨が町の家の中で営まれ、お年寄りが畳の部屋で施術を受ける。その傍らでは、縁側に腰掛けた近所の人たちが、何気ない話をしている。
そんな昔の町にあったような風景を、もう一度つくりたい。
治療が終わればすぐに帰るのではなく、少し話をしたり、誰かと顔を合わせたり。
用事がなくても、ふらりと立ち寄れる。整骨院でありながら、地域の人にとって身近な居場所でもある。
彼がつくりたかったのは、そんな場所でした。
だからこそ、新しいテナントではなく、畳や縁側のある古民家に心が向きました。
やがて出会った一軒の古民家。
長い年月を重ねた柱や梁を残し、畳を整え、施術のための場所へと少しずつ手を入れていきました。
そこに残る空気を受け継ぎながら、自分がずっと思い描いてきた風景に近づけるために。
こうして古民家は、住まいとしての役目を終えたあと、地域の人を迎える新しい場所として、もう一度時間を刻み始めました。

