水の上に残る かき船の記憶|加古川市「かき庄」

加古川駅の南口から歩いてほどなく。細い水路をまたぐようにして建つ一軒の料理屋があります。

大正十五年創業の「かき庄」。

口へ向かうには、水の上に渡された細い通路を進みます。その足元をのぞけば、建物の下には今も水が流れています。

家の下に川がある。そんな少し不思議な眺めに、知らずに訪れた人なら、きっともう一度振り返ってしまうことでしょう。

この少し変わった建ち方には、かき庄が歩んできた時間が残されています。

はじまりは、川辺に浮かぶ一艘の「かき船」でした。

船の中に人を迎え、牡蠣料理をふるまう。そんな店を始めたのは、広島県から加古川へやって来た初代・高山立宝でした。

大正十五年、かき船が行き交い、ニッケの工場で町がにぎわっていた頃のことです。

その後、店は火災に見舞われます。それでも、この場所を離れることなく、もう一度ここに店を再建。船から始まった店、「かき船」の面影を残すため、場所を変えず、水路の上に再建されたといいます。

建物の下を流れる水をのぞくと、ここに船があった頃の景色が、ほんの少し浮かんでくるようです。

橋のような入口を渡り、暖簾をくぐると、外の街とは少し違う時間が流れています。奥には畳の個室が並び、長く使われてきた料理屋らしい、落ち着いた空気が漂います。

船はもうありません。それでも、水の上に建つ姿そのものが、かき船から始まった店の物語を今に伝えています。

かき庄

兵庫県加古川市加古川町篠原町77

079-422-2178

AM11:00~PM2:00/PM5:00~PM9:00、月曜定休、予約がない時は夜の営業を休む場合あり

https://kakisyou.com/

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この記事を書いた人

古いものは新しいものより少しだけ物語を知っています。
古民家や町家、レトロな建物を訪ね歩き、その魅力を静かに集めています。
誰かの「行ってみたい」が生まれる場所になれたらうれしいです。